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方式に従わなければ無効になってしまう遺言ですが,その方式によって種類が分けられます。
方式は普通方式と特別方式がありますが,特別方式は,船が沈没しそうな時や伝染病で隔離されているといったような特殊な状況下での遺言の作成なので,これを読まれているほとんどの方には現状では関係ないでしょうね。
そこで,普通方式に属する遺言を中心にご説明いたしますが,普通方式の遺言にも自筆証書遺言,公正証書遺言,秘密証書遺言という3つの種類がありますので,それぞれの特徴を中心にご説明したいと思います。実際にはそれぞれの遺言に細かいルールがいろいろとありますので,そういった部分については私共のような法律専門職に相談し,アドバイスを受けてから選択することをお勧めいたします。
この遺言は,文字どおり自分で紙に手書きする遺言です。遺言の全文,日付,氏名をすべて手書きして,印鑑を押して完成です。このように説明されると,結構簡単にできるんじゃないかと思われる方も多いでしょう。また,書店に並んでいる書籍には『自分でできる』なんてキャッチフレーズが付いた自筆証書遺言の作成を勧める物も目に付きますし,私共と同じ法律専門職の中にもこの自筆証書遺言を勧める方もいらっしゃいますが,私共の事務所では,依頼人の方が『どうしても自筆証書遺言にしたいので,その作成をサポートして欲しい』という場合を除いては,お勧めしておりません。
お勧めしない理由の主なものとしては,作成に関する煩雑さ,検認手続きの煩わしさ,保管の危険性です。
以下で,具体的なご説明をいたします。
● 作成に関する煩雑さ
①遺言の内容,つまり財産の詳細などについてもすべて手書きしなければなりません。ワープロやコピーを利用したら無効です。病気などの理由で,自分で字を書くのが難しいという状況の場合は問題が生じる可能性があります。
②遺言が複数枚にわたる時の契印,筆記用具,日付の記載方法,使用する印鑑,押印の場所などは,将来その解釈を巡って争いを招かないように望ましい選択をしておくことが必要です。
③偽造変造を防止するために訂正方式も厳格で,訂正方式に違反があった場合は訂正の効力が生じませんし,訂正によってかえって遺言全体が無効になる場合もあります。
● 検認手続きの煩わしさ
自筆証書遺言の場合,遺言者が亡くなった後,実際に遺言の内容を執行するためには,最初に家庭裁判所による『検認』という手続きを経なければなりません。この検認手続きを受けることは相続財産の名義変更にも必要ですし,検認手続きを怠ると罰せられます。
手続的には,相続人が家庭裁判所に遺言書を提出し,すべての相続人を呼び出します。そして,審判期日に相続人またはその代理人の立ち会いの下に遺言を開封して,その遺言の内容を確認し,立ち会った関係者に意見を聞き,調書の作成をしてもらってようやく終了です。
せっかく相続人のために遺言を作成するのに,家庭裁判所に出向かせて審判を受けさせるという煩わしさをわざわざ遺していくことはないですよね。
● 保管の危険性
自筆証書遺言の場合,遺言者が自分で保管することになります。あまり気が付きにくい場所に保管しておくと,後で発見されない可能性もあります。また,後日,関係者によって遺言の内容に手を加えられる危険性が消えることはありません。
この遺言は,自筆証書遺言とは異なり,公正証書という公的な文書で遺言を作成します。私共の事務所でお勧めしているのはこの遺言です。というのも,遺言者が自ら手書きする必要もありませんし,検認手続きを経る必要もありません。遺言の原本も公証役場で保管してもらえるため,紛失や関係者による偽造変造といった危険も生じません。
私共は,お客様からどういった内容の遺言にされたいのかお聞きして,アドバイスやご提案を行います。そして,お客様に代わって公証役場との打ち合わせや必要書類の収集を行い,お客様がスムーズに公正証書遺言を作成できるようにお手伝いしております。
この遺言は,自筆証書遺言と公正証書遺言のちょうど中間に位置するといったところです。遺言書に遺言者が署名押印し,封筒に入れて印鑑で封印します。それを公証人に提出して,日付等を封筒に記載してもらい,遺言者,公証人等が署名押印して完成です。
署名押印以外の遺言書の内容は,ワープロ作成でもコピーでも構わないので,その部分は公正証書遺言に近いです。ただし,原本を公証役場で保管することはありませんので,自筆証書遺言と同じ保管の危険性は拭えません。
結局,公証人に担当してもらわなければならない部分もあるわけですから,中途半端な遺言を作成するよりは,よりリスクの少ない公正証書遺言の作成をお勧めいたします。